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ゆめのはなし ~階段は骨の白~

2020年06月01日 22:05

ゆめのはなし ~階段は骨の白~

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死んだ妻を追って天国へ来た。

ただひたすらに上ってきた階段。

その終わりにある椅子に、彼女は顔を見上げるようにして腰かけている。

そこには彼女しかおらず、雲海を越えて、ポツンとあるだけ。

階段は登れば登るほど、ごみに溢れかえって、途中からごみで出来ているのかというほどに脆く、

時折崩れては、そのまま奈落の底の真っ暗闇へ溶けていった。

お風呂洗い用のスポンジ、パンダのミトン、居間の本棚の一段目。

ごみは記憶の彼方へ俺をつれていく。

ある会議室の記憶。

ここにはテーブルがあって、椅子があって、社長が座っていて、彼女もいて…。みんなで談笑しながら記憶を組み立てている。

何もかもが遠い遠い、誰も手にも届かない天空の上に高く高く、高く積み上げられている。

または高校時代の修学旅行。

僕はタイムリープのなかで謎を解いていく。変な3人組が仲間で、ヨダレを垂らす彼女を好きになった彼も、やがてヨダレを垂らすようになった。

ごみの中にあった一台のテレビゲーム。

移動式だが、工具箱のように重い。

折り畳み構造の中央にはブラウン管の小窓がひとつ。ほとんどが描画系の機械部品で出来ている。

小窓には野球ゲームのエンディングが流れていた。

彼女が好きだったものだ。

確か、俺はそれを必死に治した。

電気が入るようになったが、今度は電源が切れなくなった。

ずっとループして終わりなく流れ続けるエンディング。

風の音すらない青い青い空に、3和音の曲がひたすらに響く。

記憶の中の彼女はいつも笑っていたのに、ここにいる彼女の顔は真っ黒でよく見えない。

目の前にいるはずなのに、どこか目でどこが鼻だろう。

きっと、ずっと待ち続けて病んでしまったのかもしれない。

もう帰ろう。またこの穴だらけを落ちないようにしないといけない。

まだテレビゲームの音がなり続けている。

彼女に背を向けるように一段降りて、

ならいっそ落ちてしまおうか。という気持ちになった。

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おわり
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